◆それは、平和な金曜日の昼前に起きたのでございます。
我がオフィスに突然、見知らぬすし屋のおっさんが入ってきました。
何だろうといぶかるわたしたちに向かって、おっさんの言うことには、
「うちの馬鹿せがれが、3人前の注文を間違えて30人前もすしを作っちゃった。
だめになっちゃうと困るし、誰か買い取ってくれないかな?
本当は950円するんだけど、500円に負けとくから!」
早く売り切らなきゃ、もう昼になっちゃうよ!と慌てるおっさんに、同情した(&すし500円につられた)会社の人たちが次々と名乗りをあげます。
その場にいなかった人の分も買ってあげる者、
親切に別のフロアにも内線してあげる者、
瞬く間に10個以上のすしが売れ、おっさんは感謝しながら別のフロアに走っていきました。
残念ながら、わたしだけは自分のお弁当があったので、買わなかったのですが…
「あの人も大変だねえ」
「人助けになってよかったよかった」
「500円ですしが買えてラッキーでしたね」
和気藹々と盛り上がるオフィス。
「ところで、中身はどんなのかな?」
「950円ですからねぇ、期待しちゃいますね」
「まさか巻物だったりして!」
「950円でそれはないでしょー!」
わははは。わははは。
そのうち、我慢できなくなった若者が、そっと折り詰めのふたを開けてみます。
「………
………
………
………」
巻物でした
真っ黄色のたくあんと、かっぱと、かんぴょうと、グレーがかった鉄火巻きでした
「あれ?」
「えぇ?」
「巻物なの?!」
950円もするすしなんだから握りに決まってる、と信じて疑わなかったのに、開けてみたら巻物だったのです。
しかも、飯は穴だらけだわ、のりははがれかかってるわ、とうていプロの仕事とは思えないしょっぼい代物だったのです。
ここにいたってようやく、わたしたちは、何かがおかしいと感じ始めました。
「これ、どう見ても950円なんてしないですよねぇ」
「なんか古くない?」
「そういえばあのおっちゃん、どこのすし屋だったんだろう?」
…まさか?とひらめいた人がgoogleで検索してみると…
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGLD,GGLD:2003-42,GGLD:ja&q=%E5%AF%BF%E5%8F%B8%E3%80%80%E8%A9%90%E6%AC%BA
ビンゴおぉーーーーーー
それは、とても有名な詐欺の手口だったのです…!!
読めば読むほど状況は同じ。
おっさんの台詞から自分たちの反応から、最後にインターネットで検索して大騒ぎになるオチまで笑っちゃうほど一緒。
だまされていたことに気づき、愕然とするわたしたち。
目の前に残された、誰がどんな材料で作ったかも分からない大量のすし…
しょうゆとわさびを買ってきて(そう、しょうゆやわさびすらついていなかったのです)食べてみる猛者もいたものの、大半は気持ち悪さに食欲をなくしてゴミ箱に捨ててしまいました。
#鉄火は生臭かったらしく、さすがに誰も食べませんでした
当てにしていたお昼ご飯が消えて、ガッカリしながらラーメンを食べに行く人たち。とんだ出費です。
中でも、先陣切ってだまされた男の子は「初めて詐欺に会いました…」と、見るも無残なしおれよう。可哀想に…
そして、へこむ彼を「すし小僧!!」と呼んで大笑いするわたしたち。鬼かよ!
かくして我々は500円で教訓と思い出を買い、長大な被害者リストの新たな1ページに名前を刻むことになったのでございます。
このすし屋サギ、次は、皆様のオフィスにも現れるかもしれません。
ニヤニヤとおっさんを追及してみるか?
あえてだまされて楽しんでみるか?
それは皆様のお心次第です。
…くれぐれも、おなかを壊さないようにね。
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