2009/02/28

英国王室史上最大のスキャンダル/『ブーリン家の姉妹』フィリッパ・グレゴリー

◆フィリッパ・グレゴリー著『ブーリン家の姉妹』上・下を読んだのだ。
結婚と離婚を繰り返し、ローマ・カトリック教会から破門された「青ひげ公」ヘンリー8世。
彼に仕え、野望を燃やす新興貴族ブーリン家。
そのミッションは、「一族の娘を、ヘンリー王のベッドにもぐりこませる」こと!
寵愛を得て、次の王となる男児を産むのは、姉のアンか?妹のメアリーか?
ブーリン家の姉妹の戦いの火蓋が、切って落とされる!
…みたいなお話。

#これ、去年の秋に映画が公開されてたのよね。(映画「ブーリン家の姉妹」公式サイト)
#表紙のアン(ナタリー・ポートマン)がすっごく綺麗なので、観ておけばよかった!って今更思う

ブーリン家の姉妹〈上〉 (集英社文庫)

◆長いし歴史もの(史実を基にしたフィクション)だから苦戦するかなーと思いきや、面白くて一気読み。
なんていうか、↑に書いたとおり超下世話なので、女性週刊誌のゴシップ記事読んでるみたいな気になってしまった。
タイムマシンでパパラッチ送り込みたい~。面白い写真撮れそう!

怖い絵2◆王の跡継ぎを娘に産ませて一族が栄えるなんて話は、歴史上よくあること。
その辺のドロドロは、日本の小説だと源氏物語が代表作かなぁ。ドラマなら「大奥」かしら。

でも、日本だともう少し誘い方も慎ましやかと言うか、ここまで明け透けじゃなかったと思うんだよねー。
このイギリス王室はダイレクトすぎ&乱れすぎてて唖然とする。
そりゃ国民も怒るわ。

ヘンリー8世の場合、どうしても跡継ぎの男子が生まれないプレッシャーに苦しんでいたとも言えるんだけど、それにしたって妻6人のとっかえひっかえは身勝手でしょうよ。

そういえば、この王様の肖像画、「怖い絵2」で紹介されてたぞ。
インテリかつスポーツ万能、だったらしいけど、目が怖くてさ。
まったく人間味が感じられなかった。

◆「姉だけには」「妹だけには」負けたくない競争心と、それを上回る心の絆。
王と一族の野望に翻弄されながら、懸命に生き抜いた女たち(離縁された前王妃も含めて)の姿は見事です。

歴史の知識がなくても問題なく読めるので、宮廷陰謀劇と、ゴシップ記事wの好きな方にもおすすめ~。

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2008/10/07

子どもにはもったいないダークさ。/『ダレン・シャン』シリーズ

ダレン・シャン 1 (小学館ファンタジー文庫)◆どこにでもいる普通の少年、ダレン・シャン。
パパとママ、生意気だけど可愛い妹と暮らし、学校では友人たちとサッカーに熱中する。
ところが、ある日、街に来た怪しげなサーカス「シルク・ド・フリーク」に親友と出かけたことから、彼の生活は一変してしまう。
伝説の存在「バンパイア」と取引をするはめになり、彼に血を流し込まれ、半バンパイアにされてしまったのだ…!

◆と、こんな感じで始まる「ダレン・シャン」全12巻。
小学校高学年~中学生向けに書かれたダークファンタジーを読んでみました。

「ハリー・ポッター」以来、雨後のタケノコのよーにボコボコ出版され続けるジュブナイルのファンタジーのひとつ、という印象ですが、この作品の特徴は、なんと言ってもダークさにあるかと。

第一巻のサブタイトルが「奇怪なサーカス」となっている通り、最初に「シルク・ド・フリーク」というサーカス団が出てきます。作品を通して重要な位置を占めるこのサーカス団、シルク・ド・ソレイユだのボリショイだの木下だのといったご家族で楽しめる健全(?)なサーカスではありません。フリークショー、見世物小屋です。

「これ、子供向けで大丈夫なのかな」と心配にさせるオープニングから、さらに内容はパワーアップ。
問題のありそうなキャラクターがばんばん出てくるし、登場人物が死にまくる。何も悪くない子どもでさえ死んでしまう(というか無残に殺される)のがきつい。グロテスクな描写も多いです。
そして、終盤になるとストーリー展開がややこしくなり、子どもだと、ラストがどうなったかいまいち理解できないことが多いんじゃないだろうか、という…

こう書いてみると、どう考えても子供向けの本とは思えません(^^;

◆感想としては、面白かったです。
文章が易しくてすらすら読めるとはいえ、12冊だと結構なボリューム。それを最後まで読んじゃいましたからね。

しかし、子どもに読ませたいかというと。
たとえば、甥っ子や姪っ子が小さいうちに読ませたいかというと…

わたしは、読ませたくないな。

個人的に、小学生の頃に江戸川乱歩にハマり、その頃からダークなものが大好きになってしまった人間なので、もし自分が小学生でこれを読んだら夢中になっていただろうと思います(^-^;
ちょっと怖い話のほうが、子どもにウケるんだよね。

でもこれは、さすがに行きすぎ。
主人公の成長や彼を取り巻く人間たち(とも限らない)との友情といったテーマを理解するところまで行かず、単にグロくて怖くて残酷な話にキャーキャー騒いで終わりになってしまう気がする。
子どもが喜ぶからといって、ゆがんだ好奇心を刺激するだけの話を与えるのは、無責任なのではないかしら…
もしあなたの周りのお子さんがこの本を読んでいたら、きちんとフォローしてあげてくださいね~。

◆この内容なら、やはり大人向けにするべきだったのでは。
大人の読者からすると、ジュブナイルでない普通の小説の文章だったらもっと面白かっただろうにというところがとても残念です。

年齢の高い登場人物が多く(バンパイアなんか何百歳だ)、それぞれの性格も人間関係も魅力的だから、そういうところに焦点を当ててほしいのに。そうしたらもっと深みが出たのに。
残酷なシーンだって、変に気を使わずに、書きたいように書けたはず。
もったいないなぁ、と思います。

…やっぱりあれ?大人向けだと売れないから??(^ー^;

◆登場人物の中では、ラーテン・クレプスリーが好きです。
一番人気があるんじゃないかと思うんだけど、どうかしら。

↓以下、主にラスト近辺のネタバレ感想(重大ネタバレあり、未読の方は注意!!)








主人公が成長するに従って、敵→師→父親→同志と変わっていくのが面白かったな。
信念があって頼りになって、時々見せるお茶目さが可愛くて。(しかし、姿を想像すると、どうしても「D.Gray-man」のクロウリーになってしまうのだった)

大好きだったので、彼が死んだシーンはショックで、本を閉じてしまった。
その後の 「実は我輩は生きていたのだ!」「やった、僕たち勝ったんだね!」 → 主人公の妄想でした(しかもクレプスリーは犬死にでした) で追い討ちをかけられたときには、怒りさえ覚えました。趣味悪すぎるぞ!

作者なりの考えがあるんだろうけど、子どもが無残に殺されるのはやっぱり辛かった。
サムもそうだし、シャンカスに至っては(スティーブの残虐さを表すためとはいえ?)、いくらなんでもむごすぎると思うんだよね。あそこまでする必要があったのか、今でも疑問。

◆リトルピープルとしてよみがえったダレンが一人ぼっちで死んでいくラスト自体は、悪くなかった。
光の中、バンパイアの楽園で笑顔のクレプスリーに会えることを願いながら、消えていくダレン…
うん。しみじみしていて良い。
この寂しい結末が、子どもに受け入れられるかどうかは別として(^^;

◆ところが。
ラスト直前のダレンの行動は、どうなんだろう?
過去に飛び、運命を変えたあの日のシルク・ド・フリークに忍び込んで、幼い日の自分を脅して無理やり家に帰らせるというアレです。

これでダレンがクレプスリーと会うことはなくなり、つまり半バンパイアになることも、家族と別れてクレプスリーと長い旅に出ることも、バンパイア将軍としてバンパニーズとの戦いの運命を決めることもなくなり。
代わりに、誰か知らない別の少年が、ダレンが通ってきたはずの長く辛い道を辿ることになるらしい…

工エエェェ(´д`)ェェエエ工

何十年もかけて培ってきた根性とか度胸とか友情とか、何だったの?
ここまで来て、知らない子に全部丸投げ?
クレプスリーと出会ってないんだから死後に楽園で会ったって分からないし、ていうか人間とバンパイアじゃ行くとこ別なんじゃないのか?ていうか過去がこれだけ変わったら現在のダレンの状況も変わるんじゃないの?どうなってんのそこんとこ(大混乱)

もう、おばちゃんびっくり仰天でしたよw


◆これ、映画化されるって話だけど… どうなるんだろう。
忠実に作ったら全年齢対象ではなくなるだろうし、変にぬるく作っちゃったら、それはもう「ダレン・シャン」ではないしなあ。
難しいところよね。

関係ないけど、クレプスリー役は、渋くて格好良いおじさんがいい!

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2008/10/01

『インシテミル』 / 米澤 穂信

インシテミル◆求人雑誌の片隅に載っていたアルバイト情報。
時給の欄には、何の間違いか、「1120百円」と書かれていた。

1時間につき、112,000円?

この数字が本物ならば、7日間の拘束期間が明けたら、あなたの手には大金が転がり込んでくることになる。 ただし、仕事の内容は一切不明。

…このアルバイト、あなただったら、応募してみますか?それともやめておきますか?

◆って、いかにも怪しいよねえ!
怪しいっていうか、まず最初に、生きて帰れるのかどうかが知りたいよね。

どんなアルバイトかを説明しようとすると、ネタバレになっちゃうんだけど(^^;
皆さんの予想通り、生命にかかわるお仕事です。かなり危険です。
そんな怪しいバイトについ出来心で応募してしまった、ある貧乏な大学生のお話です…
なんだこの可愛らしい表紙w

◆ストーリーは、わりとオーソドックスなミステリー。
用意された舞台といい状況といい、随所にちりばめられた小物といい、古典ミステリーの好きな人ならニヤニヤとツッコミ入れつつ楽しめそう。
あまり読んだことないわって人だと、ピンと来ない部分が多々あるかもしれないな。でも、知識がないと読めないわけではないので大丈夫です。

軽い感じでスイスイ読めますが、スイスイ読めすぎる上に先が気になるので、睡眠不足にならないよう気をつけてください。#わたしはなったσ(^^;

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2008/02/27

彼らはなぜ、走るんだろう。/『風が強く吹いている』三浦しをん

風が強く吹いている◆先日行われた東京マラソン。
TV中継を見ていたら、よく知っている通りがランナーであふれているのが新鮮で、面白かったです。
東京の観光案内としてもいい番組ですよね。現在は日本国内でしか放映されていないらしいですが、ぜひ海外でも放映して東京の街をアピールしてもらいたいな。
長時間の道路封鎖や民放TV局の独占状態(あれはやりすぎだ)といった問題はありますが、新しいお祭りのひとつとして、うまい形で定着すればよいなあと思っています。

周囲では、ランナーこそいなかったけれど、「友人が走るので応援しに行った」「友人がボランティアで参加していた」という人が何人もいました。
応援に行った人などは「来年は私も絶対エントリーする!」と意気込んでいるぐらい、マラソン熱が高まっています。

◆わたしはというと、大の運動オンチで走るのもめちゃめちゃ遅く、100m走で周回遅れに近い記録を叩き出したという輝かしい過去の持ち主。
なので、当然、マラソンだの駅伝だの、やる人の気が知れん。その中継をずーーっと見て応援してる人(例:うちの父)の気も知れん。結果だけ新聞で見りゃいいじゃない! …と思っていました。つい最近までは。

今年のお正月、入院中の父の病室で一緒に箱根駅伝を見ていたら、意外と面白かったんですよね。我が母校が久しぶりに大健闘したせいもあるんですが。
長距離走って、決められた区間をただタラタラ走ればいいってもんじゃないということが、ようやく分かったんです。入念な作戦を立てた上で、ランナーがレースの状況や自分の体調を考えながら組み立てていくものなんですねぇ。 #気づくのが遅い
特に、駅伝は、一本のたすきをメンバーがつないでいくっていう精神性も日本人好みだし、意外な健闘あり思わぬ悲劇ありと、ドラマ性に富んでいる。なるほどー、だからこんなに人気あるのかー、と、ようやく納得が行った次第です。

◆さて、ここで『風が強く吹いている』(三浦しをん)ですよ。

これは、箱根駅伝を目指す若者たちの物語。
とある大学のおんぼろ寮に住む学生が、ある日、ひとりの青年の走りを見かけるところから始まります。
青年はこの春から同じ大学に入る予定で、生活費に困っており、住むところも決まっていない様子。

彼の走りを見て、「ずっと抱いていた夢をついに実現させる時が来た」そう思った学生は、彼を寮に連れて行き寮生たちに紹介します。
そして、新入りが個性豊かなメンバーに馴染んできた頃、歓迎会の席上で爆弾発言をするのです。 「この10人で、箱根駅伝に出よう」と…!

◆まったくの素人がほとんどの上、たった10人しかいない陸上部が、強豪がしのぎを削る箱根駅伝になんて出られるわけがないですよね…
でも、この夢物語には、バカバカしいと一蹴できない魅力があります。
いかにも大学生らしい生活が(少々冗長に思えるほど)のんびり、ゆったりとつづられていくのを読んでいると、季節の移り変わりに従ってどんどん愛着が湧いてきて、彼らの無謀な試みを応援したくなります。
最後の方なんて、結末は気になるけど、彼らと別れるのが寂しくて、先を読みたくない気持ちになってしまうほど。

寮生たちは、好んで苦労なんかしたくない、面白おかしく過ごしていられればそれでいいと考えるような、いかにも今時の普通の子ばかり。
しかしそんな彼らだからこそ、走ることに魅了されていき、夢に向かってひとつになっていくさまに、胸が熱くならずにはいられません。駅伝を沿道やTVの前で応援する人たちの気持ちが、少し分かるようになってくるんです。
スポーツものですが、根性や辛さ、厳しさを前面に出していないので、そういうノリを敬遠しがちな人にも抵抗なく読めるのではないでしょうか。

大学や実業団の陸上部などに取材をされて研究されたそうで、駅伝のコースや走り方についても丹念に描かれていてリアリティがあります。
わたくし、来年の箱根の時は、このお話で得た知識を利用して、箱根通ぶるつもりです!

山口晃氏の日本画ふうのカバーイラストには、10人の寮生と、文中に出てくるさまざまなシーンが精密なタッチで描き込まれています。
きめ細かくてユーモラスで、いかにもこの物語にぴったり。素敵な装丁も、すみずみまでチェックしてください。

◆走ることとともに生きてきたのに、高校陸上部の人間関係に疲れ果て、表舞台から姿を消していた走(かける)。
陸上を愛しながらも足を故障し、満たされない思いを胸に大学を卒業しようとしていたハイジ。
この二人が出会った時、ひとつの夢が生まれ、やがてその熱が周囲を巻き込んで大きく回り始めるのです。
走るって、何だろう。人はどうして、走りたいと思うんだろう。さまざまなことを自分に問いかけながら、箱根駅伝を目指してひたすら走り続ける若者たち。
たった10人の弱小陸上部のチャレンジは、奇跡を起こすことができるのでしょうか?

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2007/06/28

シェイクスピア著/松岡和子訳『お気に召すまま』

お気に召すまま−シェイクスピア全集 15 (15) ◆人里離れた「アーデンの森」に集まった者たちの、恋やすれ違い、素朴な暮らしや宮廷の争い…
様々な人間関係が織りなす愉快なシェイクスピア喜劇、「お気に召すまま」。 2004年8月に「蜷川シェイクスピア・シリーズ」第14弾としてさいたま芸術劇場で上演されたこの舞台が、いよいよ、7/5から渋谷「シアター・コクーン」にて再演されます!

◆主演のロザリンド&オーランドーには、初演と同じく成宮寛貴君&小栗旬君ペア。ィヤッホゥ!!
その他にも、前公爵は重厚な吉田鋼太郎さん、皮肉屋ジェイクイズは「蜷川シェイクスピア」に欠かせない高橋洋さん、シーリアはクール・ビューティー月川悠貴さんと、初演で好評だった役者さん揃い。

非常~~~~に人気の高い舞台なので、ファンの声にお応えして、今回は、東京だけでなく大阪・静岡・仙台でも上演されるとか。前回は行けなくて涙を飲んだ人々も、多少は救われたでしょうか。

レプリークBis Vol.8 (HANKYU MOOK) (HANKYU MOOK) (HANKYU MOOK) (HANKYU MOOK) ◆わたしは、「これがS席だったら、A席って一体どこなのさあ?!」と言いたくなるような席ですが(まぁ行けるだけマシというところですか…(;ー;)、2回拝見しに行きます。

ナリさんを観るのは、舞台「魔界転生」以来ですが、あれからさらに経験を積んでいるはず。
キュートで一途なロザリンドがどれだけパワーアップしているか(初演の時以上にテンションが高くなってたらどうしよう…)、楽しみです!

◆ところで、待ちに待った松岡和子訳版 『お気に召すまま』が、ちくま文庫よりようやく発売されました!
もーーー、ずーーーっと待ってたんですよーーーー。
蜷川シェイクスピア(というより最近上演されるシェイクスピア劇はほとんどそうなんじゃ?と思っている)の台本は松岡和子訳バージョンですからね~。
当然、初演時に何度も聞いて覚えてしまったナリさんの台詞も、この方の本なのです。
だから、絶対に手元に置いておきたいと思っていました。

格調高くても少々埃臭い(失礼)古い訳と比べて、若い恋人たちの胸のときめきが伝わってくるような、みずみずしく元気いっぱいの言葉たち。
一方で、元貴族たちの交わす哲学的な会話が物語に深みを出しています。面白いです!

そうそう、本を持っている人は、どのページでも適当に開いて、ぜひ音読してみることをお勧めします。
シェイクスピア劇を演じる役者さんの苦労が、少しだけ分かります(^^;
すっごい大変なの、ほんと!!

ナリさん、頑張ってね♪( ̄▽ ̄)

彩の国シェイクスピア・シリーズ NINAGAWA×W.SHAKESPEARE DVD BOX IV◆2004年、初演時のDVDが発売されました!
今となっては、ちょっと見るのが怖いけどw 初々しいナリさん&小栗くんの舞台が楽しめますよ。

北村一輝さんの「恋の骨折り損」とセットなので(これも楽しかったー!)、美形だらけでウハウハですな。

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2007/06/13

野沢尚『リミット』

リミット ◆恐ろしかった。
このサスペンスは、とにかく恐ろしかった。
ホラーやサイコミステリが大好きなわたしなのに、『リミット』はどんな恐怖譚よりも怖かった。
今まで「読後最悪感」トップの座を飾っていた桐野夏生『グロテスク』を抜いて、断トツで気分が悪くなった。

主人公は、幼児誘拐事件の担当になった婦人警官。
被害者の母親役として交渉に当たっていた彼女は、犯人から身の凍るような脅迫を受ける。
「お前の息子を誘拐した。返してほしければ、警察を裏切り、身代金の運び役になれ」と…

文章量は少々長めながらも、ノンストップで読みきれるほどの魅力があった。
傷を負い、警察に追われ、ボロボロの幽鬼のような姿になってまでも我が子を追い求める母親の執念。
罪の無い子どもたちに襲いかかる運命の残酷な描写には目を覆いたくなったが、結局、読み終えるまで手を止められなかった。

◆幼児を狙う犯人の真の目的には、背筋が寒くなる。
身近に幼い子どものいる人にはショックが大きいと思うので、読まない方が良い。
いや、逆に、自分の子どもが誘拐される可能性もあるのだ、ということを実感するために、読んで気を引き締めた方がいいのかもしれない。
そして、この物語に出てくるような犯罪が実際に世界で起きていることも、知らなければならないのだろう。

しかし、読み終えて現実に戻ってからも、心がずっしり重い…
事件が解決したとしても、失われた子どもの命も人生も、二度と戻ってこないのだ。
「これはフィクションだから」と自分に言い聞かせても、辛くて悲しい。
どうか、世界中の子どもたちが、何事もなく健やかに育ちますように。そう願わずにはいられない。

◆余談 : うちには今、「早産の兆候あり、絶対安静」と言われて里帰りしている妊婦の妹&甥っ子がおります。
寝てばかりで退屈なので、わたしが代わりに図書館でいろいろ借りてくるのですが、「野沢尚の本が読みたい」というリクエストがありまして…

適当に借りてみたら、これorz

…読み終えた後、そっと図書館に返してきましたw

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2007/05/29

伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』

フィッシュストーリー ◆『動物園のエンジン』『サクリファイス』『フィッシュストーリー』『ポテチ』、全4作の短編集。

クールな文体と気の利いた台詞に、時にくすっと笑わされ、時にホロリとさせられ、時に肩透かしを食らわされる。
伊坂さんらしく、他の作品とリンクした部分は多々あるものの、それほど重要ではないのでこの本だけを読んでも問題はないと思う。もちろん、知っていればニヤリとできるけれど。

良くも悪くも、肩肘張らずにさらりと読める本。
個人的には… 『ポテチ』のラストなんか好きだけど、全体的には少々物足りなかったかな。
次は長編が読みたい。

◆余談。仙台はもともと人気の高い街ですが、伊坂さんの本を読んでいると、ますます好きになってしまいます。
#ライブを観るため&観光に、3回ぐらい行った

賑やかな駅前のアーケード、少し足を伸ばせば海に山に温泉、美味しいものもいっぱい…
行きたいなあ、仙台(゜p゜)

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2007/03/13

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

夜は短し歩けよ乙女◆新聞の書評で見かけて、気になっていた一冊。
表紙が素敵だと思ったら、アジカンのジャケットも手がけている中村佑介氏のイラストでした。

「鬼才モリミが放つ、キュートでポップな片想いストーリー!」だの「長編恋愛小説!」だのと銘打たれていたので、てっきりラブストーリーだと思っていたけれど、これは青春小説でもあり、ファンタジーでもあり… なんとも言えません。ジャンル分けが難しいのです。

そして、とても、とても、素敵な小説でした!
君繋ファイブエム◆舞台は京都。
主人公は、大学のサークルの後輩である「黒髪の乙女」に密かに恋する男の子。
もう一人の主人公は、「黒髪の乙女」。

男の子はなんとか彼女の気を引こうと無駄な努力を重ねますが、何しろ相手は無邪気で好奇心旺盛、素直で感動屋でアルコールを愛し、天然で恐ろしく鈍感な乙女。
彼になど目もくれず、ひたすらマイペースに、ずんずんと京都の街を歩いていきます。

そして出会う、不可思議な人々。

夜の通りに突如現れる、三階建ての電車に住まう謎の老人。
詭弁を弄し、うなぎのようにくねくねと「詭弁踊り」を舞い狂う「詭弁論部」の面々。
タダ酒飲みの天才、鯨の胃袋を持つ美女。
「天狗」を自称し、ふわふわと天井に浮き上がる飛行術を持つ浴衣の男。

こんな妖怪じみた人々に邪魔されながらも、彼は必死に黒髪の乙女の後姿を追いかけ続けるのです。ストーカー寸前の一途な想いが、彼女に届く日は来るのでしょうか…?

◆少々古めかしい文体は、品がよく、上質なユーモアに満ちており、快いテンポで読むことができました。現代の京都という設定だけれど、有り得ない事件が普通に起きてしまう、どこか別の次元に迷い込んでしまったような不思議な雰囲気。

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーその幻想的な世界は宮沢賢治の描く幻燈のようでもあり、奇怪な登場人物の跋扈する様は(どなたかがamazonのレビューで書いていて、おぉ!と膝を打ったのですが)漫画「うる星やつら」のようでもあります。(個人的に、押井守氏に映画化してほしいと思ってしまいました)

残り頁が少なくなると、終わってしまうのが寂しい、ずっとこの魅力的な世界に浸っていたいと思わされる小説でした。これからも、何度でも本を開いてこの人たちに会いに行きたくなるような気がします。

とにかく、むちゃくちゃ楽しくて愛らしいお話ですよ。 web角川のflashビューワーで、12ページほど立ち読みが可能です。独特の文体に抵抗がなければ、ぜひお手にとって、ご一読くださいませ♪

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2006/01/23

遠い昔への旅

◆広く浅く脈絡のないわたしの興味範囲の中では、いくつかのテーマが惑星のようにぐるぐると回っていて、その時々でミニブームが到来しては去っていきます。
今年の正月に来たブームは「原始時代」… ←これはわりと頻繁に来る
科学博物館を見学したり本を読んだりしては、古い古い時代の地球に思いを馳せていました。
こんな流れに乗って、面白かった本を二つご紹介。

イヴの七人の娘たち ◆「イヴの七人の娘たち」(ブライアン・サイクス著)

オックスフォード大学の遺伝学教授、ブライアン・サイクス氏が書いた本で、大ベストセラーになったものです。
'91年にオーストリアで発見された「アイスマン」(5300年前の成人男性の遺体)の骨からDNAを採取する試みが成功。それを現代ヨーロッパ人のDNAサンプルと比較したところ、全く同じ配列を持つサンプルがありました。
この結果、アイスマンはヨーロッパ人であることが確認され、サンプル提供者はアイスマンの遠い子孫であることが判明したのです。
これをきっかけに、現代ヨーロッパ人のルーツを探る研究が始まりました。
彼が注目したのは、「ミトコンドリアDNA」の塩基配列。この特異な遺伝子の性質をうまく用いると、たとえば、二人の人間の共通の祖先がどれぐらい前に存在していたかが分かるのだそうです。
そして、現代ヨーロッパ人が遺伝的に七つのグループに分けられ、各グループの起源となった合計七人の女性がいたとし、それぞれに名前をつけて発表したのでした。これが「イヴの七人の娘たち」というわけです。

七人の女性たちの暮らしぶりを想像して書かれた章を読むと、彼女たちが、ひからびた骨ではなく血と肉を持った実在の人間として目の前によみがえってくるようでした。何万年も前の地球というと、面白いものの自分とは関係のない別世界のように思えてしまっていたけれど、DNAという細い糸で確実につながっているんですよね。
彼女たちが必死に生きて、何万年も前から途切れることなく子孫を残してきた結果として自分がここにいるのだと思うと、その重みに圧倒されてしまいます…

◆わたし、興味はあっても専門知識がないので、この説がどれだけ信憑性が高いのかは判断できないんだけど…
そんな人間にも分かるように、易しく、他の事例も交えて解説してくれるので、最後まで楽しく読むことができました。中には、処刑されたロマノフ一家のDNA鑑定なんて興味深い話も。
研究はすべてが順調だったわけではないけれど、試行錯誤しながら一歩一歩進んでいくさまは非常にエキサイティング。反対派との攻防のような少々生臭いエピソードもあり、研究者の世界の裏側が垣間見えます。

最後に。自分のルーツを知りたいと思う人には、2万5千円でミトコンドリアDNA解析をしてくれるそうです。やってみる?ソニー・マガジンズサイトへ

ケーブ・ベアの一族 (上) ◆「ケーブ・ベアの一族 『エイラ-地上の旅人』」(ジーン・アウル著)

主人公は、クロマニオン人の少女エイラ。突然の地震により家族を失ったエイラがネアンデルタール人の一族に出会い、葛藤の中で成長していく物語なのです。
エイラは類稀なる能力を秘めており、思考と工夫を積み重ねて新しい方法を発見していくのだけれど、それが一族には理解できない。悪魔的な存在とみなされたり、女のくせに男に反抗する身の程知らずとして処罰されたり…
暴力で彼女を屈服させようとする人間に、傷つきながらも果敢に立ち向かっていくエイラ。とても凛々しく、知的で清々しい女性です。胸が熱くなります。

原始時代の人々がどんな風に暮らしていたか、集団生活のルールや狩りや育児などの細々とした描写も面白い。これは当然フィクションだけれど、綿密な調査を元に書かれているそうで、なるほど、きっとこうだったんだろうなと納得できる内容です。
子どもにもぜひ読んでほしい… と思うんだけど、性に関してあからさまな記述があり、不快な部分もあるので(原始時代なのでしょうがないことではある)、保護者の方は気をつけてあげてください。

集英社の特設サイトがありました。冒頭のムービーを見ると、どんな話なのか分かりやすいと思います。
とはいえ、ちょっと派手にあおりすぎていて、違和感があるけどね…

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2005/12/30

「あらしのよるに」で成様2。

◆年末の慌しい中、映画「あらしのよるに」観てきました。(遅くなってごめんなさい成様。ちょっと忙しかったんです)
いい映画でしたよ。
派手さはないけれど、丁寧に作られたきれいなアニメーション。
これなら、お子様も楽しく見れますねd(^ー^)





………お子様はな。(==

◆この映画は食べる側・オオカミと食べられる側・ヤギの種族を超えた美しい友情がテーマ。
もちろん純真な子どもの目にはそう映るはずなのですが、大人にはちょっと違った風に見えてしまうわけですよ。
それは、ほのかに漂う隠微な香り…

たとえば、誰もいない山道で二人きり、おなかをすかせたオオカミの目の前で、丸々としたおしりをふりふり歩くヤギ。
その後、やっぱり誰もいない山頂で眠くなったヤギは、おなかをすかせたオオカミの目の前ですやすやと昼寝を始める。
ほんのちょっと味見するぐらいならいいんじゃないかな、あぁでもこれはエサじゃないんだ、大事な友達なんだ!!と一人苦悩するオオカミ…

…いや、スクリーンに映っているのは可愛らしくデフォルメされたオオカミとヤギであって、決して人間じゃないんですけど。
でも、何かこう、何かねぇ、もじもじしてしまうというか、いたたまれない気分になってきませんか。
密かに大人を落ち着かない気分にさせつつ、あくまで美しい児童文学の形を崩さないのがこの「あらしのよるに」の面白さでもあるわけなんですが。そういえば昔「本当は怖い○○童話」みたいな本流行ったよね。

◆で、この裏側の雰囲気を倍増させているのがナリさんの声なのですね。
ヤギなんて普通に考えたらあどけない女の子にでも当てさせればいいところを、なぜナリさんか。
演技はなかなか上手で、感情も良く出ていました。
うふふ、という忍び笑いやささやき、息遣い、ほんっと可愛い上に妙に色っぽくて、お前実はオオカミの純情をもてあそんでないか?この小悪魔め!このこの!!
とまで思える声なんですけど、
…子どもにゃいらないわなこの色気は。どう考えても大人向けだよなぁ(==
ナリさんをキャスティングしたスタッフの勇気、っていうか英断には拍手を送りたいですね。
かなりギリギリ!でも大人は楽しいかったからいい、グッジョブ!(*^ー゚)b

※以下、原作を読んだ人にはネタバレなので気をつけてください※
◆ストーリーは、細かな変更はあるにせよほぼ原作をなぞっているだけなので、原作を読んでしまっていると少々盛り上がりに欠けました。何も知らずに見る方がいいのかも。
原作と映画を比べるのは無意味かもしれないけれど、感動の度合いで言ったらやっぱり原作だよね。
あの素朴な絵と大きな文字を見ただけで泣きそうになってしまうもん、絵本って凄い。


※ここからはラストのネタバレ。これから原作や映画を見る人は読まないでね!※
◆やっぱり、映画のラスト、というか原作の7巻「まんげつのよるに」は蛇足に感じてしまう。 記憶喪失になったガブがメイのことをエサと思って食べてしまおうとするのも、なんかその辺の三文小説みたいで…
もし6巻の「ふぶきのあした」で終わっていたら、児童文学としては悲しすぎるやりきれない結末だけど、だからこそいつまでも胸に残るんだけどねぇ。
って、ハッピーエンドだって分かっているからこんなこと言えるのかもしれないわね。


◆あああ思い出した。すっかり書くタイミング逃してた。
乱歩地獄」も観たのよわたし。

で感想、「ねむかった」「きもかった」以上。
#え~それで終わり~?ファンのくせに~

うん、わたしも乱歩ファンのつもりでいたけど、この映画はだめだった。
たるくて眠くて沈没寸前だった。あと気持ち悪くて吐くかと思った。
それは血だとか腐乱○体だとかから来る気持ち悪さではなくて、中年女性のぇすぇむぷるぇぃというシチュエーション(この際相手がナリさんということはどうでもいい)にうぅっぷときたわけですが。
見たくねぇよそんなもん。下品な表現ごめんなさい。
この「鏡地獄」に関しては、原作にあった、主人公を虜にするほどの鏡の悪魔的な魅力、神秘性が感じられなくて、最後もコントか?!と思うようなオチだったのが残念でした。ナリさんの着物姿は良かったけどもそれだけではねぇ。

◆ナリさんネタでもういっちょ、雑誌「H」12月号の「Hな2ショット」では表紙でしたね。
テーマとは対照的に、ナリさん&中島美嘉さんは体温を感じさせない作り物めいたカップル。クールでゴージャスな雰囲気、ざらざらした画面もよく合って美しかったです。表紙のナリさんの横顔、物問いたげに開かれた唇が素敵。
密着度では次のツカモトさん&小栗旬君(ここまでくっつきますか!)、直球ストレートなェロさでは吉川ひなのちゃん&SHIHOさん、凄かったね。
わたし、実はSHIHOさんはあんまり(ゴニョゴニョ)…という感じなのでちょっと微妙でしたが、ひなのちゃんは大好きで永遠の憧れですので。今回もスタイルからポーズから、パーフェクトにかわいかった~~。

◆さて、今日はもう30日。皆さん大掃除は終わりましたか?
わたしも忙しいのでそろそろ失礼しますよ。
昨日撮っておいた「赤富士鷹」見なきゃならないのでね…
って、大掃除じゃないのかよ!とむなしく一人ツッコミしたところで、ではまた。

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