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2008/10/07

子どもにはもったいないダークさ。/『ダレン・シャン』シリーズ

ダレン・シャン 1 (小学館ファンタジー文庫)◆どこにでもいる普通の少年、ダレン・シャン。
パパとママ、生意気だけど可愛い妹と暮らし、学校では友人たちとサッカーに熱中する。
ところが、ある日、街に来た怪しげなサーカス「シルク・ド・フリーク」に親友と出かけたことから、彼の生活は一変してしまう。
伝説の存在「バンパイア」と取引をするはめになり、彼に血を流し込まれ、半バンパイアにされてしまったのだ…!

◆と、こんな感じで始まる「ダレン・シャン」全12巻。
小学校高学年~中学生向けに書かれたダークファンタジーを読んでみました。

「ハリー・ポッター」以来、雨後のタケノコのよーにボコボコ出版され続けるジュブナイルのファンタジーのひとつ、という印象ですが、この作品の特徴は、なんと言ってもダークさにあるかと。

第一巻のサブタイトルが「奇怪なサーカス」となっている通り、最初に「シルク・ド・フリーク」というサーカス団が出てきます。作品を通して重要な位置を占めるこのサーカス団、シルク・ド・ソレイユだのボリショイだの木下だのといったご家族で楽しめる健全(?)なサーカスではありません。フリークショー、見世物小屋です。

「これ、子供向けで大丈夫なのかな」と心配にさせるオープニングから、さらに内容はパワーアップ。
問題のありそうなキャラクターがばんばん出てくるし、登場人物が死にまくる。何も悪くない子どもでさえ死んでしまう(というか無残に殺される)のがきつい。グロテスクな描写も多いです。
そして、終盤になるとストーリー展開がややこしくなり、子どもだと、ラストがどうなったかいまいち理解できないことが多いんじゃないだろうか、という…

こう書いてみると、どう考えても子供向けの本とは思えません(^^;

◆感想としては、面白かったです。
文章が易しくてすらすら読めるとはいえ、12冊だと結構なボリューム。それを最後まで読んじゃいましたからね。

しかし、子どもに読ませたいかというと。
たとえば、甥っ子や姪っ子が小さいうちに読ませたいかというと…

わたしは、読ませたくないな。

個人的に、小学生の頃に江戸川乱歩にハマり、その頃からダークなものが大好きになってしまった人間なので、もし自分が小学生でこれを読んだら夢中になっていただろうと思います(^-^;
ちょっと怖い話のほうが、子どもにウケるんだよね。

でもこれは、さすがに行きすぎ。
主人公の成長や彼を取り巻く人間たち(とも限らない)との友情といったテーマを理解するところまで行かず、単にグロくて怖くて残酷な話にキャーキャー騒いで終わりになってしまう気がする。
子どもが喜ぶからといって、ゆがんだ好奇心を刺激するだけの話を与えるのは、無責任なのではないかしら…
もしあなたの周りのお子さんがこの本を読んでいたら、きちんとフォローしてあげてくださいね~。

◆この内容なら、やはり大人向けにするべきだったのでは。
大人の読者からすると、ジュブナイルでない普通の小説の文章だったらもっと面白かっただろうにというところがとても残念です。

年齢の高い登場人物が多く(バンパイアなんか何百歳だ)、それぞれの性格も人間関係も魅力的だから、そういうところに焦点を当ててほしいのに。そうしたらもっと深みが出たのに。
残酷なシーンだって、変に気を使わずに、書きたいように書けたはず。
もったいないなぁ、と思います。

…やっぱりあれ?大人向けだと売れないから??(^ー^;

◆登場人物の中では、ラーテン・クレプスリーが好きです。
一番人気があるんじゃないかと思うんだけど、どうかしら。

↓以下、主にラスト近辺のネタバレ感想(重大ネタバレあり、未読の方は注意!!)








主人公が成長するに従って、敵→師→父親→同志と変わっていくのが面白かったな。
信念があって頼りになって、時々見せるお茶目さが可愛くて。(しかし、姿を想像すると、どうしても「D.Gray-man」のクロウリーになってしまうのだった)

大好きだったので、彼が死んだシーンはショックで、本を閉じてしまった。
その後の 「実は我輩は生きていたのだ!」「やった、僕たち勝ったんだね!」 → 主人公の妄想でした(しかもクレプスリーは犬死にでした) で追い討ちをかけられたときには、怒りさえ覚えました。趣味悪すぎるぞ!

作者なりの考えがあるんだろうけど、子どもが無残に殺されるのはやっぱり辛かった。
サムもそうだし、シャンカスに至っては(スティーブの残虐さを表すためとはいえ?)、いくらなんでもむごすぎると思うんだよね。あそこまでする必要があったのか、今でも疑問。

◆リトルピープルとしてよみがえったダレンが一人ぼっちで死んでいくラスト自体は、悪くなかった。
光の中、バンパイアの楽園で笑顔のクレプスリーに会えることを願いながら、消えていくダレン…
うん。しみじみしていて良い。
この寂しい結末が、子どもに受け入れられるかどうかは別として(^^;

◆ところが。
ラスト直前のダレンの行動は、どうなんだろう?
過去に飛び、運命を変えたあの日のシルク・ド・フリークに忍び込んで、幼い日の自分を脅して無理やり家に帰らせるというアレです。

これでダレンがクレプスリーと会うことはなくなり、つまり半バンパイアになることも、家族と別れてクレプスリーと長い旅に出ることも、バンパイア将軍としてバンパニーズとの戦いの運命を決めることもなくなり。
代わりに、誰か知らない別の少年が、ダレンが通ってきたはずの長く辛い道を辿ることになるらしい…

工エエェェ(´д`)ェェエエ工

何十年もかけて培ってきた根性とか度胸とか友情とか、何だったの?
ここまで来て、知らない子に全部丸投げ?
クレプスリーと出会ってないんだから死後に楽園で会ったって分からないし、ていうか人間とバンパイアじゃ行くとこ別なんじゃないのか?ていうか過去がこれだけ変わったら現在のダレンの状況も変わるんじゃないの?どうなってんのそこんとこ(大混乱)

もう、おばちゃんびっくり仰天でしたよw


◆これ、映画化されるって話だけど… どうなるんだろう。
忠実に作ったら全年齢対象ではなくなるだろうし、変にぬるく作っちゃったら、それはもう「ダレン・シャン」ではないしなあ。
難しいところよね。

関係ないけど、クレプスリー役は、渋くて格好良いおじさんがいい!

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