野沢尚『リミット』

このサスペンスは、とにかく恐ろしかった。
ホラーやサイコミステリが大好きなわたしなのに、『リミット』はどんな恐怖譚よりも怖かった。
今まで「読後最悪感」トップの座を飾っていた桐野夏生『グロテスク』を抜いて、断トツで気分が悪くなった。
主人公は、幼児誘拐事件の担当になった婦人警官。
被害者の母親役として交渉に当たっていた彼女は、犯人から身の凍るような脅迫を受ける。
「お前の息子を誘拐した。返してほしければ、警察を裏切り、身代金の運び役になれ」と…
文章量は少々長めながらも、ノンストップで読みきれるほどの魅力があった。
傷を負い、警察に追われ、ボロボロの幽鬼のような姿になってまでも我が子を追い求める母親の執念。
罪の無い子どもたちに襲いかかる運命の残酷な描写には目を覆いたくなったが、結局、読み終えるまで手を止められなかった。
◆幼児を狙う犯人の真の目的には、背筋が寒くなる。
身近に幼い子どものいる人にはショックが大きいと思うので、読まない方が良い。
いや、逆に、自分の子どもが誘拐される可能性もあるのだ、ということを実感するために、読んで気を引き締めた方がいいのかもしれない。
そして、この物語に出てくるような犯罪が実際に世界で起きていることも、知らなければならないのだろう。
しかし、読み終えて現実に戻ってからも、心がずっしり重い…
事件が解決したとしても、失われた子どもの命も人生も、二度と戻ってこないのだ。
「これはフィクションだから」と自分に言い聞かせても、辛くて悲しい。
どうか、世界中の子どもたちが、何事もなく健やかに育ちますように。そう願わずにはいられない。
◆余談 : うちには今、「早産の兆候あり、絶対安静」と言われて里帰りしている妊婦の妹&甥っ子がおります。
寝てばかりで退屈なので、わたしが代わりに図書館でいろいろ借りてくるのですが、「野沢尚の本が読みたい」というリクエストがありまして…
適当に借りてみたら、これorz
…読み終えた後、そっと図書館に返してきましたw
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